2025.11.8 日本経済新聞の記事「(漢字そぞろ歩き)『自+犬』=『臭』?『ヽ』はどこへ」から
簡略化が招いた大きな悲劇
コラムの著者 阿辻 哲次氏(漢字学者)は、「臭」の起源と戦後の簡略化で起こった混乱について語っている。
◯終戦直後に作られた「当用漢字表」が原因
阿辻氏によれば、「臭」は「自」と「大」という文字から形成されている。「自」は自分を指す時のジャスチャーで自分の鼻あたりを指すことから、「鼻」を表すことがあるという。となると、「臭」は大きな鼻の意味になるが、実はこの文字は中国でも戦前の日本でも使われなかった戦後の字形であるという。「くさい」と読む漢字は昭和24年の「当用漢字字体表」で「臭」と書くまで、「自」と「犬」を上下に組み合わせた形であった。
この「犬」が「大」に簡略化されたことで一悶着があったという。犬は嗅覚の発達している動物だから、犬と自=鼻を組み合わせて「においをかぐ」や「におい」という意味の漢字ができた。ところが、この「臭」を構成要素とする「嗅」が平成22年の常用漢字表海底において、新たに常用漢字表に入れる候補となった。「嗅」は五感の1つ「嗅覚」に使われるから、この字を表に入れることには異論はなかった。
問題は、「嗅」の右(旁)が「自+犬」になっていることを巡って委員会は紛糾したという。
- 常用漢字にするなら、「嗅」の旁を「自+大」にする意見:国語教育関係者たちが強く主張。口偏(へん)の有無で「臭」と違うことは混乱を招くとした。PCなど電子機器の漢字変換では旁を変えるようにすれば良いと意見。しかし、すでにPCやスマートフォンの普及したものを全て変えることは億単位で、さまざまな媒体に記録されたものも改修しなければならない。
- 常用漢字にするなら、「嗅」の旁を「自+犬」にする意見:PCなど電子機器の漢字変換では「嗅」となり、「自+大」に当たる漢字はない。新たな常用漢字となった字形がPCやスマートフォンに表示できないことになる。
- ちなみに、戦後の当用漢字字体表では「臭」だけでなく、「器」、「突」、「類」なども「犬」から「大」に変わっている。
つまり、戦後の当用漢字字体表では、簡単に漢字が書けるようにとの目的で、たとえ1画でも画数を減らそうとしたからである。だがそのために文字の構造が歪められ、本来は許されない字形簡略化が随所に起こってしまった。🐕🧑⚕️👦👶🏫💬👩🤝❤️👦👧💰📓🗺️🚢🩺💉🏢⚡️🎓👔⏰🔧💻🖥📻🖋🌏💡🔎🌍🇯🇵
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